私が主に使っているカメラとレンズは古いカメラとレンズが多い。
MFフォーカスは当たり前、ピントは目測のものもある、露出計も無く、巻き上げも手で巻き上げなど手間が多い。
最新のレンズとカメラならAF付きで露出も自動など便利だと思う。何もしなくてもいいぐらいだ。
ではなぜ古いカメラを使うのか。
目次
- 古いから
- 音楽も影響している
- 戦前のドイツ
- 外貨の獲得
- 話題に尽きない
- まだ直せるかもしれない
- 壊れたが直った
- 買うときにドキドキする
- めんどくさいのが好き
- 正解がいっぱいあるのが面白い
- MTF曲線が全てなのか?
- 古いレンズとカメラは買いやすい
古いから
理由は古いから。
これに尽きる。
古けりゃ、古いほどいい。そういう価値観。写りなんて二の次。
今使っている機材で一番古いのは1931年製のTessar 5cm f3,5。
実に88年前。米寿。
普通に写るだろ?これでノンコート。
1931年と言えば、昭和6年で柳条湖事件で満州事変へ、泥沼の日中戦争へ。
首謀者は日本人で初めてライカを使った石原莞爾。
このレンズの生産国ドイツではナチ党の台頭。
戦争へイケイケドンドン。
こういう付随する歴史が好き。
88年もよくぞ生き残った。
今は1920年代を目指してる。
古いカメラとレンズを持っているだけで安心。
パニック発作を持っている人が抗不安薬持っていると安心するというのと同じで、持っているだけで安心。発作を起こしてレンズを買ったりしない。
カメラ屋さんに入っても落ち着いてカメラを見ていられる。
傷だらけのものもあれば傷がほとんどないものも存在している。
外観は傷が多いがレンズは傷がないもの、外観は綺麗だけれどピントが合わないもの。
買っても外れることが多い。
それでも買ってしまうのは宝石を見るような目で見ているからだと思う。
あとなぜか戦前、戦中、戦後に惹かれる。これは理由が見つからない。血が騒ぐ。
自分の祖先が会津若松の武家で明治維新の時に負けて逃げ延びた末裔で、祖父宅には真剣もあった。
真剣を振り回している幼少期の私の写真もある。
ちなみにその真剣は役所に寄付したとのこと。
それが理由で血が騒ぐのかとさえ思う。
音楽も影響している
また、多感な高校生の頃にSlayerの1986年のアルバム「Reign Blood」の「Angel of Death」という曲にハマった。
Slayerで一番好きなアルバムはと問われればこれか。10曲で30分弱。スピード、攻撃性、テンション、全てにおいて満足できる。BPMが200を超える曲ばかり。好き。
いいおっさんたちが血の雨を浴びて笑ってるぞ。必見。
もうダウンロードの時代は終わったよね。いつでも聞ける。あああああーーーー!
Angel of Deathとはナチス親衛隊(SS)将校でかの悪名高きアウシュヴィッツ収容所の主任医官ヨーゼフ・メンゲレの渾名。死の天使。
ヴォーカル、トム・アラヤの叫び声から始まるこの曲、アルバムの中では長い曲に入る4分51秒。
Angel of Deathの曲が好きになり、詞を読み込んだ。
驚いた。40万人以上が死んだ。麻酔なしの人体実験。
詞の始めは、
"Auschwitz、the meaning of pain"
アウシュヴィッツ、それは苦痛の意味
"Four hundred thousand more to die"
え?何この数字?英語で訳せない・・・400と1000って?足して40万?え?400万人じゃなかったっけ?教科書でそう習ったぞ!?
"Forced in like cattle" "Showers that cleanse you of your life"
"家畜のように押し込められ、シャワーがお前の命を流し去る"
そしてこの曲のせいでSlayerのメジャーデビューが遅れたこと。親ナチと思われるかもしれないという理由。
今じゃ絶対に出せないか?
欅坂のメンバーの制服が炎上したぐらいだから。
全てが衝撃だった。すべての歌詞を覚えて自分の机に書き込んでいた。
中二病も真っ青だけれど、英語の勉強にはなった。
でも大学受験は落ちたけどな。
その後にデスメタルにハマってしまい、反骨だけならまだしも、死とか反キリストとかにハマってしまった。
激しかったらそれでいいって感じだった。
例えばNaplam Deathなら反骨で済むけれど、DecideとかCannibal Corpsにもハマってしまって、完全にファンタジーの世界に行ってしまって受験戦争から現実逃避してた。
こういうTシャツを秋葉原で買って大学に来て行った。
みんなから白い目で見られるのが嬉しくて嬉しくて。
俺はお前らとは違うんだぞって。一歩先言ってるんだぞって。
一歩先どころか痛い存在で後ろに下げられていたことに気づかなかったけれど、楽しかった。
でもよく読むと私のような戦争に無知でユダヤ人虐殺があったことは教科書で知ったぐらいのものには物凄い興味を沸かせるものだった。
アルバムが出た当時は400万人が虐殺されたと認識されていたが、1995年には150万二と改められた。そういうのって何か"起点"がないと興味が湧かない。
以来、ネットもない時代に図書館に行ったり様々な本を読んで理解に努めて、これが人間の所業かと思え、ナチスを憎んだ。
これを学ぶきっかけを与えてくれたSlayerに感謝したいし、作詞、作曲したジェフ・ハンネマンに感謝したい。
ジェフ・ハンネマンは2013年にアルコール依存症が原因で病死しているが、彼の家族も軍属だったようで、曲作りにはその影響が強いとのこと。
戦前のドイツ
そんな酷い時代のドイツにおいてなぜこんな物作りができたのか?
WWIで大負けして(ヒトラーも伍長として参戦してる)負債を抱えて、国民の不満は高まるばかり。
WWIの戦後処理で大変苦労していた。
ちなみにここでいう「戦前」とはWWIIよりも前ということ。
そこでヒトラーがアーリア人種が立ち上がって世界征服だ!と。
世界征服と言ったら暴力による支配しかない。つまり軍事力の強化。
軍拡、富国強兵かと。今も変わらないね。
ところで今、日本はこれできる?無理よね。お金ないもの。
外貨の獲得
例えば当時のライカレンズにはメートル表記とフィート表記のレンズがある。
今は両方かと。
日本ではメートル表記の方が人気があって値付けも高い。
なぜ分けたのか?
輸出だ。アメリカ向けにフィート表記。国内、その他向けにメートル表記。
お陰でライカA型についているエルマーはフィート表記なのに、外付けのレンジファインダーはメートルしか見つからず2.5をかけることになるという。その逆も然り。
1920年代後半からドイツ製カメラは売れに売れまくって外貨獲得。
これを戦費に回して1939年ポーランド侵攻へ。
その後、第二次世界大戦、敗戦国、ツァイスの分断、格安高性能な東ドイツのツァイスレンズ、ロシアのツァイスコピー、ライカ型コピーカメラ、ローライコピー型二眼カメラの大量生産の後、一眼レフの台頭からミラーレスの台頭。
これで大枠はあってるかなと。
話題に尽きない
レンズ一本でこんなに話題が広がるなんて。自分でも驚いてる。
面白いだろ?
古いレンズ、カメラを持ち寄ったらこういう会話になるよ絶対に。
写りなんて二の次って思えるわ。
その時の世代の思想とかが反映されている。思想が見える。
まだ直せるかもしれない
先日、AF、フルオートカメラのAF-S Nikkor 50mm f1.8GとF80Sの組み合わせで撮ってきたけれど、すごく新鮮で楽しかった。
これはこれで残しておきたいセットだと思ったし、年に一回ぐらい持ち出すのなら楽でいいと思った。
壊れたら直せないけれど、パッと買い換えられる値段だし。
ボディは500円ぐらい。レンズは1.6万ぐらい。
でもf1.4が欲しくなったので50mm f1.4か58mm f1.4にしたいんだけれど、58mm f1.4は中古で10万以上払って買うことになるが、その価値があるかどうかで悩んでいる。
標準。
果たして。
買ったとして10年後直せるのか?いや、その前に手放すか。
値段で悩んでいるなら買った方がいいと思うとは至言だなと。
遠回りして50mm f1.4から買ってみてもいいかなとは思っている。
ああ、50mm f1.4が何本目になるんだとかなんとか。
だいたいさー、ニコンもずるよなー、永遠のFマウントっぽいけれど、全然共通性がないものがいっぱい存在するんだもん。
ま、いいか。
壊れたが直った
一度1934年製のバルナックライカDIIIが撮影中に壊れたが、これも部品があるので直せるという。
しかし、Hektor 5cmやSummar 5cmの固定鏡胴はカシメてあるので直せないという。
でも、ま、いっかと。
私のHektor 5cm f2.5も2~3mあたりでピントが外れると言われたが直せないという。
修理人の方曰く、気づいてた?と。
ピントきてるよね?気にならないよね?
私は全く気付いてなかった。
じゃあいいんじゃない?直せないし。はい、いいですね。という会話。
まだ直せるかもしれないという感じがあるので1~2万出しても直して買おうかなと思える。
もちろん部品がなくて直せないカメラも出てきているし、10万単位の修理代がかかるカメラも出てきている。
どうする?
買うときにドキドキする
自分で手にとって、見てみる。触ってみる。
中古品なので一期一会。これしかない。買うか見送るか。見送ったら最後、1分後には売れてしまうかもしれない。
これは本当に経験した。
AR-1というニコンのシャッターレリーズを1000円でお店のショーウィンドウで見つけて、帰り際に買おうと思って店員さんと話していたら、他のお客さんが来店して、即決してこうして帰った。
次に出会ったときは2000円超えてた。ああ・・・。
その場で決めないといけない。
もちろん、数日なら取り置きも可能だが、数日で決めないといけない。
さらに最近は程度の良いカメラがどんどん減って行っている。当たり前だ、もう新品が売ってないからだ。
中古カメラは買って使って、程度が悪くなってお店に下取りに戻ってくる。これは真理だと思う。
程度が良くなって戻ってくることはない。
使えば傷が増えるし、コレクターなら買ったままかもしれないがその間10年ならきちんと整備されていたのか?
整備代にいくらかかる?それならまだいいか。お金さえ払えば良いんだから。
ドキドキする。
これでいいのか?と。
買って買える途中に我慢ならず、一本試写していく。
上がりを待つ。ドキドキする。写ってた!よかった!写ってなかった!残念!
新品なら写っていて当たり前だが、中古品は買って撮ってみないとわからない。
だから保証付なんてカメラだと選ぶのがすごく楽だな。
その分高いけれど。
新品のM-Aでも買う?
60万なら中古品の外れを引いてハマるより安い。
ま、新品買っても中古品を買うんだけれどね。
だいたいレンズが中古レンズだったりね。
めんどくさいのが好き
古いカメラとレンズはいちいち、めんどくさい。
Elmarとかの絞りは嫌がらせかと。
でも、良い意味で簡素化はされていると思う。
バルナックライカなどはその最たるもので、ピント、シャッターダイヤル、絞りだけ。
MFはAFみたく半押ししてピントが外れるということは絶対にない。撮り手しだい。
ほんとElmar 5cmとバルナックライカが一台あったらなんでも撮れるよなって思う。
あとは今風のカメラならフィルムをセットして蓋を閉めるだけで自動的に1コマ目まで巻き上げてくれる。
古いカメラは自分でセットして、巻き上げて巻き戻しノブが動いているのを確認する、そして蓋を閉めて2コマ巻き上げて1にセットする。
ああ、大変。
でも、楽しい。
趣味は非日常なのだ。コスパが悪いのを楽しむんだ。
正解がいっぱいあるのが面白い
趣味は自分の世界さえ良ければそれで良い。人の価値観なんて知るか。
機械式時計が好き。いやいや電波時計の正確さが好き。どっちも正解。
宗教の勧誘のように押し付けるものではない。
純正のファインダーが正解?
非純正のファインダーが正解?
どのカメラを選ぶのが正解?
全て正解なのだ。
数学のように一つではない。あやふやで曖昧な世界を楽しむ。
私は白黒つけたがる正確なのでいつも人生苦労している。灰色の人生を送れたらなと思う。
でも趣味は自由だ。人のことなぞ知らん。
他人が使っているカメラがかっこいいと思えば欲しいと思うし、褒める。
でも気に入らなければ別にそれでいい。あえてかっこい悪いとは言わない。
なんで悪いカメラを買ってしまいましたねって、言ってしまうんだろう。
あえてお互いが気分を悪くなるきっかけを作る必要などないのに。
いいなと思ったものだけイイねを押せばいいじゃない。
MTF曲線が全てなのか?
今のレンズはMTF曲線を示せばどんな写りをするのか理解できる方々が多い。
私は何度見ても曲がっていない方がいいというぐらいしかわからないし、興味がない。
でも、まっすぐなMTF曲線を見てご飯を何倍も食べられる人もいると思うぞ。
現行のレンズはMTF曲線が支配しているようで、正解が一つのような気がしてならない。
現代のレンズの正解は高画素化に対応した「高解像」かなと。
そんな中で「好きなレンズ」や「好みのレンズ」を見つけるのはすごく難しい。
それを見つけられる人は本当に凄いと思う。
かなり高いレンズが多いと思うし、それを試すことができる。
カメラは外観で判断できる部分あるから救われているか?
MTF曲線を無視して「味のあるレンズ」を作って欲しいという人も少数いるが、コシナの出している、NOKTON 40mm f1.4などは最たるもので、新しい鏡胴で古いレンズ思想を入れた最新レンズだ。
4万って、安いよね。
高性能なレンズを作るのが光学設計者の使命なら、写りの悪いレンズを作って欲しいと会社で命令されたら相当悩むのではないか?
これはアイデンティティの問題だ。
今の光学設計はほんの少しのところを凌ぎあって、設計しているのだと思う。
それを敢えて古い設計を使ってそのまま出して、売れたとしても素直に喜べるのだろうか。
設計者のエゴと言われればそれまでだが、会社の方針と設計者の理想が重なれば幸いだ。
古いレンズとカメラは買いやすい
性能が悪いレンズでも写りを見ていいなと思うレンズを選ぶのは楽だし、外観を見て沈胴レンズがかっこいいと思えばそれで買える。
それが古いレンズには当てはまりやすい。
あんまり当時のパンフレットとか性能を詳しく書いたものがなく、撮影者の主観が多いので買いやすいし、わかりやすい。
ヌケが良いのヌケって知ってる?
コントラストと解像度の違いは?
色ノリが良いと言われると濃い色になるのかなと思ってる。
ポエム的に書いてくれる人もいるのでそれに共感したら買えば良い。
開放での描写はしっとりとしていて叙情的だとか。意味不明だが共感したら買い。
いや、言語化できるのは凄いし、アートにおいて、いや、全てにおいて言語化は必須だけれど。
ここまで買いやすいと書いたが、わかりやすいので買いやすい。
初心者にも入りやすい世界だと思う。
値札を見て二度見するほど高いものもあるが、それはただのお金の問題。お金さえ用意すれば買えるのだ。
これらが自分が古いレンズとカメラを使う理由だ。
他に敢えていうなら、かっこいいから。佇まいがいいから。眺めてていいから。
操作感?あんまり期待してない。
古いレンズ、カメラに自分を合わせてる。
楽しくて楽しくて、当分新品レンズカメラを買うことがなさそうだ。
はー、今年も防湿庫点検がやってくる・・・。