レンジファインダーカメラNIKON S用の広角レンズ、W-NIKKOR・C 3.5cm f2.5を手に入れた。
ああ、ついに35mm。S2は50mm枠しか出ないから50mmだけでいいやなんて思っていたのも束の間。
このレンズは1952年(昭和26年)に販売が始められた。
戦後たったの6年でこれが作られたのかと思うと、戦前からあった日本のものづくりのすごさがわかる。
(ちょうど"朝鮮特需"もあったといえばあった。戦争が経済を救うというのは歴史が物語っている)
f2.5と言えば、1952年当時は"大口径"に分類されると思うが、かなりコンパクト。その割に真鍮製でずっしりしている。かっこいい。
このレンズはSマウントの他、ライカマウントも作られているのでLマウントのバルナック 型カメラ、SマウントのS型どちらでも使うことができる。
目次
攻めていた日本製レンジファインダー用レンズ
ちなみにf2.5という開放値だが、1952年当時、ライカの35mmレンズではSmmaron 35mm f2.8が1958年、Summicron 35mm f2も1958年まで待たないとならない。
つまりライカより早くより明るいレンズを作っていたということになる。
f2を切ったレンズ、W-Nikkor 3.5cm f1.8も1956年発売とさらに早い。
1950年代の日本製レンジファインダーレンズはかなり攻めていたと思う。
精機光学(現在のキヤノン)は1951年にSerenar 35mm f2.8が発売されているし、Canon 35mm f1.5は1958年に発売されている。ライカのSummilux 35mm f1.4は1961年発売だ。
50mmレンズに至ってはニコンは1956年にNikkor N 50mm f1.1を、キヤノンはCanon 50mm f1.2は同じ1956年に、さらに世界最高速レンズCanon 50mm f0.95を1961年に発売している。
・CANON 50mm F1.2 - キヤノンカメラミュージアム
・CANON 50mm F0.95 - キヤノンカメラミュージアム
ズノー光学からはZnow 50mm f1.1が1952年に発売されている。恐るべし日本メーカー。
有名なライカのNoctilux 50mm f1.2に至っては1966年まで待たないとならない。現在の感覚で考えて、6年経っても開放値で勝ていない状態をメーカーは許すだろうか。
また、ライカのNoctiluxがf0.95を達成するには2008年発売だから、実に47年かかっている。多分もっと明るいレンズも出せそうだけれど、執念深い感じだな、おい。
やっぱり。75mm f0.85出してるし。(本物かなぁ?怪しい・・・試作品?)
明るいレンズ欲しいよねぇ。f1.4を切るのってロマンだよねぇ。
なぜ3.5cm f2.5に選んだのか
同じレンジファインダーNikon S用の35mmレンズは開放値違いでf3.5とf2.5とf1.8がある。
なぜ、f2.5を選んだのか?
まずはお店でお話を聞いた時のこと。
ニコンのS用おすすめ35mmレンズは?との問いに、店主は35mm f2.5かなぁと。
理由はやはり良く写るからと。
ニコノスというカメラにも採用されている35mm f2.5というレンズはやはり何か理由があって選ばれているはずなんですよと。
なるほど・・・と。ニコノスも欲しくなったのはここだけの話だ。
こちらもかなり参考にしたので是非。
f1.8も魅力的に思えたのだが、うーん、ちょっと高い。7万からという感じ。
フードも結構高い!軽く2万以上!トータル10万はかかってしまう・・・。
まぁライカレンズの35mm f2を買うとしたらこれでは全く済まないのだが・・・。
比べるのはナンセンスだ!
f3.5はf2.5と少し安いぐらいの相場でどうするかなぁと言ったところだったが、テッサー型ということで大体写りはエルマーと似ているのかな?と考えた。
するとf2.8より少し明るいf2.5レンズというのが好きなレンズSummaron 35mm f3.5(f2.8)のレンズ構成に似ていたので写りもSummaronのようにいいはず!と思い込み、こちらにした。
あと、35mmもf2.5あれば旅行にも持っていけるかなとか。レンジファインダー用レンズは小さくて軽いので助かる。2本持っていっても一眼レフの1本と同じぐらいか。
実際、このレンズも重さは177gだった。ボディ込みでも900g弱。軽い。
私が手に入れたW-Nikkor・C 3.5cm f2.5はこちらの本によるとTYPE-2らしい。
不等間隔絞り指標の幅が狭くなったとか。シリアル25~と言うこと。
この本すごい。 一冊持っているとS型ニコンのことがよくわかるようになる。
この本は本当に値付けが高くなってしまっているが、じっくり探していたら定価より少し高いだけの値段で手に入れることができた。トイレのお供に。
また後期型になると軽合金の黒鏡胴になる。これはこれでかっこいい。さらに軽い。
さらに黒鏡胴で絞りリングが外側につくものが出てくる。35mm f1.8と同じような鏡胴で絞り操作がしやすくなった。
持っているボディがNIKON S2のシルバー前期だったのでシルバー鏡胴がいいと思っていた。
S2も後期ならシャッターダイヤルなどが黒になるので黒鏡胴も似合うかも。
もし・・・今欲しいボディの一つでもある、NIKON Sを手に入れたら、W-Nikkor・C 3.5cm f3.5で揃えて悦に入ってみたいという思いもある。
NIKON S・・・いや、万が一だから!万が一!事故みたいな感じでね。
S3のブラックペイントが手に入ったら、もちろんW-Nikkor 35mm f1.8で揃えてみたい。もちろん黒鏡胴の5cm f1.4なども!ああ!大変!これは大事故。いや天災。
2019.7.16追記:買っちゃった・・・
いや、真面目な話、ライカのレンズより全然安いから買いやすい。
即10万、20万って感じじゃないの。3~4万とかで悩む感じの値段。
やっぱりM42などと違ってマウントアダプターが使いづらいと言うのがあると思う。
同じレンズでもSマウントじゃなくてライカでも使えるLマウントを欲しがる人が多いかも。
アクセサリーも1〜2万程度でソコソコのが手に入るのが多いが希少なのはポンと高くなる。
50mm f1.4なんか3万程度である。
当時の純正キャップとか全て揃っていると値上がってしまう。
もちろんW-Nikkor・C 2.5cm f4なんかは全部揃っていたら40万弱とかしちゃうのもある。
ファインダーはもちろん専用のフィルターホルダーとかシリーズフィルターとか細かいのがないのだ。
ごめん、2.1cm f4の現物は一眼レフ用しか見たことない。
そして外付けファインダーの旅へ
持っているボディ、S2にはファインダー枠が50mmしか出ていない。
じゃあ、外付けファインダーか・・・と、レンズを買った時に尋ねたのだが、あいにく在庫がなかったので、まぁ後で見つければいいやと楽観的に考えていたが、これがない。ないのだ。探しても出てこない。
時々e-bayなどにも出てくるが、あちらから見ると「輸入品」なのでこれまた高く設定されている。
じゃあ、ライカの35mm用外付けファインダー、SBLOOをつけるか?と思ったが、これまたカッコ悪いのだ。ライカについてこそSBLOOはかっこいいのだ。そんなことやっちゃいかんよ。
もう純正しかないと腹を決め、レンズを手に入れてからだいぶ経った頃に、e-bayにポロっと出てきたのを目ざとく発見し、入手することができた。
E・Pマーク付き、革ケース付きが"日本に戻ってきた"。
E・Pマークは「Exchange Post」の略で当時の進駐軍(米軍)のPX(Post Exchange)で販売して免税しましたよというマーク。
戦中、戦後の物品税は150%とか100%とかあって、1953年にやっと30%になった。それを免税しましたということ。30%って相当なものだよね。今、消費税10%で大問題なのに。
逆にE・P刻印の入ったものを日本人が買っていたり、持っていたら、それは横流し品で違法ですということ。
これも当時の軍人さんが買って持ち帰って、子供達が売ったりしてe-bayに出てきたのかなとか。やっと里帰りみたいな。
こういう"物語"があるものって弱いよね。欲しくなる。
さらに値段もすごく高いわけではなかった。さらに少しクモリがあるよってことだった。
届いたのを覗いてみたら、ふむ少しクモってるかな?という程度。ライカの35mm外付けファインダーSBLOOとかと見やすさを比べてはいけない。
このラッパ型がカッコ良い。他にこの後に黒が出たり、もっと小さなミニファインダーもあるが相当高いぞ!
あとはズームファインダー。
これはライカのユニバーサルファインダー(ビドム)などと同じように複数のファインダーが入っているものだけれど、これも結構する。2万は下らない。
ファインダーをおかわりしてしまった
ズームファインダーを見にお店に行ったら、今度はポツンとE・Pマーク付きとE・Pマークなしが一個ずつあった。両方ともクリーニング済み。
ズームファインダーのお値段の半分。
思わず「E・P無しを下さい」と口が滑り、小袋に入れてもらってカバンの奥底にしまって持ち帰る。
刻印有り無しでは値段の差は5000円ぐらいあったかな。ああ、やってしまった。
普段はS2に合わせてE・Pなしを使う。
万が一、E・Pありのボディを手に入れたらこれを使おうかとか。ああ、贅沢品。
いまだになぜ買ったのか理解に苦しむ2個の35mmファインダーとAR-1ソフトシャッターレリーズと当時の純正フードAN-43の二分割フード。うひひ。
相当カッコよくなったところで、次は試写も兼ねた撮影の結果を。
写りも最高かもよ!?
本とかも欲しくなるから困る。 最近の本はこう言うのが載っていないので中古本ばかりだ・・・。
2016年にNikon S2を買ったので足掛け2年で35mmレンズを買い足したことになるのか。頑張ったな・・・よく堪えたな・・・。
撮ってきたよ。