Leica M3ブラックペイントをついに手に入れた。今度は15年越し。
2006年9月に初めてのライカM6を買ってから、M3の存在を知り、その中でもブラックペイントがあることを知り、欲しい!と思ってから15年。
存在は知っていたよ、ずっと。でもね、M3のブラックペイントだよ?
実は人のもの以外で、売っているの初めて見たかも。(見たことあっても絶対に買えないものとして見ていなかった)
約1320台のM3を取り合う世界。
ここによればM3BPは1320台。
こちらの本でも少し台数について触れられている。
M2BPは2701台。
M4BP(Mot含む)は6479台。
ここまでのM型BPは10500台。
(その中でもMP(オリジナル)やMP2、M3-Dは特別なのでここからは外す)
結構多いと思わない?特にM4BPはよく見る気がする。
現存しているM型オリジナルBPは1万台ないよね。
その中でもM3BPは1000台あるのかな。当時はやはり特殊なモデルだったはずだから、普通に買うならシルバーの方がかっこいいと言う時代だったはずだし。
仕上げもシルバークロームの方が綺麗で手間がかかる。
それでも目立つと言う理由からブラックの希望が出た。
特に有名なのはアンリ・カルティエ・ブレッソンが目立つからと言う理由でM3シルバーにパーマセルテープを貼って真っ黒にしたと言う逸話。
これ面白いよ。
他にも要望が多かったのか、それを見て悲惨だな、これではライツの名が廃る?と思ったのか、M3BPを作る。
これがM3BPの始まりかと。
私はブラックペイントライカについて詳しいわけでもないし、特別ライカに詳しいわけでもない。
こうやってブログなどで発信し続けて出会いもあり、色々と知ることができる。
本当に楽しいし、ありがたいことだ。
目次
- 始まりは今回もDM
- M3BPへの想いを誤魔化してきた
- 相場がすごいことになっている
- 決断の時
- 家族会議へ
- 防湿庫が乾いていく
- 目の前にM3BPがある
- M3BP1059923
- M3BPの外観
- スペック
- このシリアルは存在しない!?
- レンズをつけてみた
- 試写へ
- エモーショナルなもの
- 総括
始まりは今回もDM
「アレモさん、M3BPは興味ございますか?」
やはり今回の始まりもM4BP1181同様、Hektor50さん=ヒットマンからのDMだった。
(リンク押したら、スマホ画面が"真っ黒"になっただろ?)
ヒットマンは私に災いをもたらす悪魔なのか、幸福をもたらす天使なのか。
hektor50さん ※以下h「アレモさん、M3BPは興味ございますか?雰囲気がグッと来る1台を見つけました。」と。銃を構える。
私「何をおっしゃいますか、M3BPは無理です。」伏せる。
漆黒の画像がピコーン。ズギューン、あぶなっ!
ヒットマンの撃った弾がかすめた。
私「あ、いいですね〜。」あぶなかった。けれど、これは警告か。
h「お値段はおそらくこれぐらいです。」ズギューン!また警告か。
私「はい、無理ですね。」これは空に向けられた弾か。
h「参考までにM41181は今このタイミングであれば、これくらいで買取可能かと思います。別途以前拝見させて頂いたレンズ諸々お持ちですよね?それも今これぐらいの買取だと思います。」
h「1181をアレモさんにお譲り出来た事は、これまでも今この瞬間も本当に良かったと思っています。
10年越しの想いもお聞きしてるからこそ大変心苦しいですが今私の目の前にM3BPがあります。
もしご興味があるのであれば、全て手放してでも私は手にして欲しいと思います。微力ではありますが買取含め全力でサポートさせて頂きます。私が見た感じ問題ないと思いますがご自身でしっかりご検討されて下さい。」(原文そのまま)
無機質に浮かぶ数字。バシュ!バシュ!バシュ!伏せている目の前の地面に土埃が上がった!
は?理解するのに0.3秒かかった。
しっかり検討しよう...再びヒットマンから
h「10分程度でお返事をお願い出来ますでしょうか。」
は?こちらは理解するのに0.7秒ぐらいかかった。
ドンという振動が体に響いた。あれ?当たった?どこに当たった?
・・・。
ヒットマンから届いたM3BP画像を凝視。
もしかして、買えるんじゃね?俺。M3BP。
夢。
幻。
欲しい。
決めた!(3分)
M3BPへの想いを誤魔化してきた
思えば、ライカのBPなんて私にはまだ早い、M3BPなんて買ったら「どんなすごい写真撮ってんの?」って詰められる。
だから、M4BPが私の限界。こう決めつけていた。
しかも2010年当時はM型デジタルのフルサイズ、M9などが出た頃で皆がMデジタルに流れてM型ライカ、特にM型BPなどは値崩れを起こしていた。
人と差をつけたいからM4BPの中でも1181。特殊なこれで自慢する方向にする。
初めてM4BPを買った2008年もM4BP1181はM4BPのプラス10万だったし、M2はプラス10万〜20万だった。
M3はプラス30万以上だった。
当時、修理屋さんでM4を診てもらっていた時に「どうします?今こんなに値下がりしてM3BPが50万とかになったら?買いますか?」と笑って会話していた。
当時も買えないですよ、と弱気だった。
その後、M2BPを買ったが、後に車購入のために売却した。
相場がすごいことになっている
このまま値下がりなのかと思ったら高騰した。
2020年の春頃はM4BPで50万〜、M2BPで150〜、M3BPで200〜だったように思う。(一部コレクターズアイテムを除く)
2021年。気づいたらM4BPは60万越え、1181に関しては軽く100万越え、M2BPとM3BPはほぼ時価=マグロか!(つまりそれだけ流動的)・・・となった。
それが今だ。
コロナ禍においても、ぽんぽんと上がっていった。
海外の富裕層が自由に買いに来られない今でもだ。
ほぼ日本人しか買えない状態において上げ止まり感があるようだが、これから入国制限がなくなったら、また値上がると思う。今だけだ。この上昇率が低いのは。
そう考えている。
今、日本人の経済力は一部の人を除いて、海外の特に中国の富裕層には軽く負けている。
オークションでは一度上げた札は落札されるまで下げない。コレクターとはそう言うものだ。かっこいい。
欲しいものに全力だ。
私もだ。私にできることなら全力だ。
決断の時
話を戻そう。
M4BP1181、レンズいっぱい、それに出せる物全てでM3BPとの「交換」の可能性が出てきた。
これはM3BP買ったらコレらのカメラとレンズは手元からなくなることを示しているし、M4BP1181はもう今のご時世、二度と買えないし、手に入らないだろう。
それでもヒットマンは更なる追い討ちをかけ、銃撃してくる。
どうします?バシュッと、また目の前の地面が砂埃をあげる。
M4BP1181は孤高の存在。
されどもM3BPは選ばれし存在。
どん!と頭が揺れた。あれ?私は撃たれたの?
決断した。決断したら早さに勝るものない。
買います(交換で)と。しかし、家族に話してから最終決定します。これだけは隠したくないのでと。
「わかりました。とりあえず押さえますね」静かにDMが終わる。
私の脳はヒットマンのブラックペイントされた弾頭に破壊されたようだ。
なんだこの安心感。気持ちいい・・・。
家族会議へ
家族に相談したところ、ライカをほぼ全部手放すって、そんなことして大丈夫なのか?また欲しくならないのか?と、心配(詰問)されたが、大丈夫(です)としか答えようがない。
査察からは逃れられない。
M4BP1181は無理だが、他のレンズなどは買い戻せると思えた。
M3BPについてはそもそも今回の"機会"を逸したら二度と買えないと思った。
結果、OKが出た。
そこからは早かった。
(やっぱ普通じゃないな俺と思う自分もいた。)
夜、エクセルを立ち上げて、売ってもいいもの、売れるものを打ち込んでいき、あらかじめ「予想買取値」を打ち込んでいって合計を出す。
合計=M3BPの値段になるように。
出せるものを積み上げていった。
防湿庫が乾いていく
防湿庫がカラカラになっていく。まさに防湿庫が乾いていく。
いつだ買ったか防湿庫を使わずにアンティークの棚にしまう程度のレンズとカメラにしたいと言ったことがある。
こういうの。いつも使うから防湿庫いらないというやつ。
ちょっと近づいた。それでもいいと思った。M3BPが手に入るのなら。
既に私の中ではM3BPを買うことになっているのだ。
M4BP1181を手放してでも。
無論、私に経済力があるのならM4BP1181は残すが、それは許されない。無理。
M3だけのMボディになったら実質50mmのみしか使えなくなるが、レンズがないのでいいやと。
M3BPにはそれほど魅力があった。
ちなみに2段ともレンジファインダー用の"小さなレンズ"で埋まっていたことをここで述べておこう。
M3BPを買うとはこういうことだ!
目の前にM3BPがある
いざ鎌倉ならぬ。いざM3BP。
M4BP1181と可能な限りのカメラとレンズを携えて。
大きなリュックと、さらに肩からカメラ鞄、そして極め付けに大型のカートを引っ張っていった。
側から見たら買い付け人か、怪しい中年バイヤー。
これら全てをヒットマンに託す。
入店するや否や、物を拝見。
どうぞと。
ずいっと出てきた「普通のM3BP」(普通じゃなかったら困る)。
その存在は私の眉間を射抜く。正確に。
あ、これ本物・・・と思い込ませるにはじゅうぶんの雰囲気。
目に前に夢のM3BPがある。しかし、普通のカメラだ。
オーラがあるとか、そんな意味不明なことは思わなかった。
黒くて、塗装が剥げているM3ブラックペイント。
少し冷静な自分がいた。
これはクールヘッド、ウォームハートだ。
冷静な頭、暖かく熱い心。
しかし、じっと見ていると「いい・・・」と思わず声が漏れてしまった。
持ってみる「いい」、ファインダーを除く「うん」、巻き上げる「うん」、シャッターを切る「うん」、「普通」だ。
独り言が多かったと思う。みんなそうだよな?
凹みなどを確認、よしこれならいい。
最後の決断は誰でもない私だ。
何よりも私の手がいいと言っている。
目じゃない。手だ。このM3を持っている手だ。
ここは清水なんかじゃない。普通の崖。
飛び降りてから空中で考えればいい。
常在戦場。
予は常に諸子の先頭に在り。
Z旗をあげよ!
この間、実に数分。
15年分の思いを数分で決める。そんなものだなと思った。
何も戦争をするわけではない。
戦争は外交の敗北であると述べたのはピーター・ドラッカー。
今回はきちんと話し合いで決着をつけたのだ。気合の問題だ。気合。
気合いで戦うわけないだろ?戦争は数だよ、数。
竹槍だって日本全土を覆って、空一面、宇宙まで届いていれば誰も近寄れないんだよ。
持参してきた買取品を慎重に並べる。
これぞ物量作戦と言わんばかりの量。
交渉の結果は・・・まる。
ほっとした。
これが正直なところ。
1円もとは言わないが、追い金は払えないと思っていた。
これはM4BP1181と同じだ。
当時もヒットマンにこれで出せるのは全てですと、持っていたM型ライカ全て出した。さらに8枚玉も。
これでM4BP1181を手に入れた。
今回もライカなどのカメラ、レンズが減ってなくなっていったが交換が成り立った。
M3BP1059923
さて、本題に入ろう。
シリアルNo.は1059923で1962年10月24日に出荷された150台のうちの一台。
今回はシリアルNo.を出す。もうここまできたら逃げられん。逃げも隠れもせん!
きちんとシリアルはメモりました。盗難に遭ったらシリアルをそらで言えるように覚えました。
M3BPの外観
私の中古カメラの許容範囲は"カメラとして機能する"こと。(これに関しては、お金を積めば直せることは承知の上)
オリジナルでも後塗りではないこと。(塗装を剥がして塗り直すこと)
なるべくグッタペルカが残っていること。(これも修繕はできる)
グッタペルカの割れもあるが、これも補修可能。
ボディも少しの機能上問題ないところの凹みならいい。
塗装ハゲは問わない。
正直なところ、M4BP1181は自分の限界だと思っていた(思い込んでいた)ので、これを壊れて不燃ごみになるまで使います!とのたまっていたが、今、改めてM3BPを手にしてみると、もっと何かが欲しいと思えてきた。
決してこれでアガリなどと、軽々しく言えない。
よくライカの終着駅はA型っていうけれどそんなことない。終着駅がないから楽しいんだよ。やっと気づいた。
これからのことはもちろん今は無理だけれどいつかと。
落下させたら仕方ない使い続けるよ。
スペック
重さ |
575g(実測) |
フォーマット |
24x36mm |
マウント |
Mマウント |
構造 |
レンジファインダー |
シャッター |
フォーカルプレーンシャッター |
シャッター速度 |
バルブ、1秒〜1/1000 |
ファインダー倍率 |
0.91倍 |
発売年 |
1962年10月24日 |
恐らくペイントだろうとシルバークロームだろうとさほど重さは変わらないし、スペックが変わることはない。
手触りぐらいか。
ペイントはちょっと暖かい感じ。冬は暖かそう。夏は暑くなるぞ。(NIKON Fの黒で経験済み)
これは夏用にシルバーのM3が必要?
夏場は装填ずみのカメラを車に放置したらフィルムが崩壊(溶解)するかもしれないな・・・。
塗りに関してはやっぱり剥がれやすい感じ。
M4の120万代あたりの方が禿げにくいと思う。
M3の一回巻きは本当に久しぶりで懐かしい。
このレバーも現行MPと同じような形だけれど、なんとなく違うと思う。MPの方が硬いというか痛い。
新品の方が安いという事実。 (値上げが決まったらしいが・・・)
現行MPの方がすぐに剥がれる。恐らく仕様でそうしているのか、塗りが薄いのか。
塗りの質はMPの方がいいに決まってる。
M3以外はスッキリ平ら。この辺りに好き嫌いがあるかも。
ファインダーも現行MPの方がスッキリ綺麗。絶対にこれは言える。
ファインダーはM3が最高とかもう過去の話よ。ただ、基線長が長いのでピント合わせはしやすい気がする。
アイレットは塗り。
底蓋のここは塗りじゃない。この辺はM3BPの中でも色々あるみたい。
いい感じに剥がれてる。
こちらはあまり禿げていない。
やはりセルフタイマーレバーの方が右手で持つためか剥がれが多い。
これもぽろっと落としそう。デッドストックとか見つけたら買っておきたい。
ASA感度は1300まで。
これは以前のオーナーが磨いていたのかも。一生懸命。
底蓋を酒の肴にする?
底蓋がいいとか言い始めたら、そろそろ自分もやばいなとは思う。
スプールを抜くと自動復元するカウンター。
これは懐かしかった。M3自体使うのが2018年の9月以来。
M4以降との違いはここが巻き戻しクランクではないこと、巻き上げレバーが折れ曲がりじゃないことだ。
巻き戻しはクランクの方が合理的だし、巻き上げレバーも折れ曲がりの方が楽だと思う。
ただ懐かしさはある。
ここもM4BPとの違い。SSダイヤルが塗りなのはM2(わずかにM4)までだ。
よくSSダイヤルがはげているのを見る。
さらにシャッターボタンの"お皿"も塗りなのはM4では"ほぼ"ないが、M3、M2は基本的に塗り。
これも許容範囲内。
この塗装剥がれがいいと思えるかどうかで人生の分かれ目。
この剥がれ方。好きだね。私は。
このシリアルは存在しない!?
ふと、この本を読んでいたら、1059万台のM3BPは見たことないと書いてあり、肝を冷やしたが、1059のM3BPで検索すると結構出てくる。
さて、どっちが正しいのか?くくく。
じゃあ、私のを見せてやろうとか?うれしい、研究に役立つのなら。
偽物です!いえ本物です!とか喧嘩になりませんように。
私のは本物です!偽物だと?戦争だ。
だめ、真贋したらだめ。戦争になるから。自分を信じろ。
レンズをつけてみた
やー、やー、いいなー。トリウムレンズのおかげか"怪しげなコーティング"みたいな色になった。
そういえば、Hektorさんのライブ配信の時、コメントで「ライカ一台一本」選ぶとしたら何かと答えた時に、M3BPと沈胴ズミクロンと答えた。
それが今ここにある!感慨深いな。言ってみるもんだ。言うはタダ。
ハゲっぷり。
惚れる。濡れる。イク。1950年台のライカは好き。1950でイク・ゴー!
誰か責任とって。かっこいいから。
俺がお前を一生幸せにするよというやつは信じるな。
一生なんて気安く使うな。
一"所"懸命だ。今ここで精一杯お前を幸せにするのが私の務めだと言え。
カッコ良すぎて、アイレットにリングを通した瞬間気絶して。この画像アップしたら、また気絶してた。
気絶体質なのかもしれん。気絶している間にカメラとかレンズを買う癖がある。
試写へ
一応2019年にOH済みとのことだけれど、使ってみないことにはわからないな。
とりあえず、ポジで試写してみようと思う。
レンズは何を使おうか。Summitarのポジってまだ撮ったことないから撮ってみようか。
いやいや王道で?沈胴ズミクロンとモノクロか?
楽しみだ。
エモーショナルなもの
さて、M型ライカはもうこれ一台しか無くなったので、当分は50mmで頑張っていこう。(というか、するしかない)
M3は50mm専門みたいなボディ(正確には50、90、135mm)なので、M4BP1181より清い形になって清々しいわ!
もちろんBPかシルバーかで撮れる写真が変わることはない。変わったら困る。
しかし、感情的な部分、エモーショナルな部分を私は大切にしたい。心の安寧とも言えるが持っていて楽しいカメラとレンズで撮りたい。
総括
今回学んだことの総括をしておきたい。
情報はお金より価値がある。
ネットより足で稼いだ方が情報が早い時がある。
決断したら即行動。
モノを見て迷ったらやめろ。
欲しい時は騒げ、買う時は黙って買え。
何よりも人と人の繋がりを大切に。
ライカより人。
人への感謝の気持ちを忘れずに。
そして手に入れた、決断した自分を褒めよう!
自分を褒める最後の砦は自分だ。
最後の最後で自分が自分を褒めなかったら誰が褒めるのか。
私は、私自身の名誉にかけて、全力をあげて崇高な理想と目的を達成することを誓う。
そして、窓を開けて外に向かってハレルヤー!と叫ぶ。
あれ?遠くのビルから何かがキラッと光った。
ドキューン!
お暇ならどうぞ。超絶高騰中。