皆さんはどんなカメラ・レンズ選びをされているのだろうか。
デザイン?速写性?AF性能?センサーの良さ?レンズの性能、MTF曲線?
カメラ選びで高性能で高機能なカメラはわかりやすく、商品としての訴求力も高く、マーケティングとして正しい方向性なのかもしれない。
しかし、高性能、高機能を追いかけ、発表し続け、発売した結果、現在は売り上げの伸びにストップがかかっている状態とみていいと思う。
ここ数年、コンパクトはもちろん一眼レフカメラの出荷数が落ち始めているようだ。その代わりにミラーレスが若干伸びたようだ。
参照;CIPA デジタルカメラ出荷台数 2018年
http://www.cipa.jp/stats/documents/j/d-2018.pdf
参照;CIPA 交換レンズ生産出荷実績表 2018年
http://www.cipa.jp/stats/documents/j/s-2018.pdf
目次
GRはなぜ売れるのか
例えば最近の目玉ニュースのようになっているRICOHのGRIII。
素晴らしいとの絶賛のようで初回出荷はほぼ売り切れのようだ。
TLも買った買ったの嵐だ。いいこと!
最近のRICOH自体経営が心もとない感じを受けているのでこういうカメラ事業としては中核になる商品が売れるのは良いことだと思う。
ではなぜGRは売れるのか。
購入前、購入時、所有した時、撮影している時、撮影した写真を見ている時に感動があるからではないか。
カメラやレンズはよくよく使ってみると、技術やスペックだけではなく、見た感じ、持った感じ、触った感じ、写った写真が大きな影響を与え、私たちに購買意欲を掻き立てられるのではないかと。
GRブランドは安定していて、裏切らない。
フィルムのGR時代から使いやすさ、コンパクトさ、写りの良さを前面に出していて、手ぶれ補正、Wifi対応などの現代的な進化はしてきたがブレの少ない、キープコンセプト。
また著名写真家がフィルム時代のGRを使いモノクロフィルムで撮っていたなどのブランディング。
手にした時に感動する。写りに感動する。これが全てではないかと。
今までのGRがことさらに何も変化を与えなかったのが、強い購買力と信頼を勝ち得ているのだと思う。
今回もファインダーの搭載を見送った。
故に私には感動が訪れず、購入を見送ったが、GRデジタルからのファンダーレスで馴染んでいる方には全く問題のないことだと思う。
むしろない方が軽快に写真を撮れると思えたのだろう。
GRに関しては初代GRデジタルから写真を趣味にしたのでとても思入れがある。
技術革新などを経て、GRデジタルもAPS-Cセンサーになり、GRとなった。この時に初めて、興味が湧いて購入した。
変わりなかった。これに尽きる。よかったと思えた。
しかしながらホコリ問題に悩まされたのと、ファインダーが欲しかったのと、AFが遅い、外れるのが耐えられなかった。
そしてフィルムカメラに集中したいと思いから手放した。
ホコリはフォトショップでなんとでもなるが、写真をPCに入れて見た瞬間にホコリが写り込んで、ピントが外れていると萎える。
私がGRに万能性を見込んでしまったのが間違いだったのだ。他の長所を活かせる使い方をする人なら唯一無比なカメラだろう。
ファインダーはギラギラした日中では見づらく、これには苦労した。DP2 Merrillなどのカメラでも同様だった。
そして、やはりファインダーをのぞいて撮りたいという思いは続いている。
ファインダーをのぞいて、ピントを合わせて、構図を確認してニヤッと笑いながらシャッターを切る。
これだけでも写真を撮るという行為が楽しくなる。
しかしGRにしかない感動あるから売れるんだと思う。
技術は永遠か
ここでいう技術というのはトンテンカンテンとかの手作業とかの職人技術のようなものではなくて、工業製品としての高機能を開発する技術。
例えば異例のロングセラーになっている、初代α7S。いまだに新品価格は20万ちょっとを維持している。(2019.3月18日現在、ヨドバシ.comにて)同じく初代α7は10万ちょっとだ。(同)
これも高感度に強い、画素数が少ないため(1200万画素)無理がなくて、階調が豊かなど、訴求力に優れているのだと思う。
さらに後継機は相当値上がってしまったので、「これで十分」という方も多いのではないかと。
すると、初代の方が売れているとは思わないけれど、人気があるということは「技術としてはこれぐらいでいい」と判断しているのではないか。
相当こだわりのある方でないとα9など最高機種まで手が出ることは少ないと思うが、そちらの方が利益率は高いと思うので、メーカーとしては売れて欲しいと思うだろう。
ここ10年で何が変わったのかと考えると「高画素化」と「高感度耐性」と感じている。
まさか、一般的なカメラとは言わないが5000万画素が出るとは思いもよらなかったし、(1600万画素ぐらいで止まるのかと思っていた)ましてや1億画素もある。
仕事などで必要な人が買う。これで十分だが、自分の生活スタイルには5000万画素は今の所必要ない。
私ならトリミング前提で1600万画素あれば十分。普通に撮る分には1200万画素で十分。
また、高感度のISO1万など、GRデジタル初代の時は考えもしなかった。(ISO100ぐらいが普段使いで我慢してISO400とかけちょんけちょんだった。FOVEONか!)
さて、そう考えてくると、技術は廃れるのだろうか、それに伴う感動は廃れるのだろうか。
ライカに見る売り方
ブランディング。これに尽きると思う。例えばセレブ層が使っているところを見せる。著名人に使わせる。または使っているところを見せる。
憧れさせる。
M8の時のマゼンタ被りは国内メーカーならリコールもんだが、対策フィルターを一、二枚、提供して、あとは自分で1万など出して買って対応しろというものだった。
それでもみんな新品で買った。売れなかったという感じは覚えていない。
流石に在庫が減ってきたか。
私は2010年ごろにM8を中古で買ったが、本当に色被りはひどかった。
やはりUV/IRフィルターは必須と考え、中古で購入していったがバカにならない出費だった。
例えば、XENON 5cm f1.5の41mmのUV/IRフィルターなど見つけられなかったので、何個もステップアップリングやダウンリングを購入した。
今もそれらが行き場を失って残っている。
その後、M9でフルサイズを出して、爆発的に売れたと記憶している。矢継ぎ早にM9-Pを出し、決定的になったのはモノクローム専用機を発売したことだろう。
これでライカのブランディングは完成したのではないだろうか。おそらくM8から使っている人は今のMデジタルなどを使い続けているのではないかと思う。
M9-Pはまだ35万もする。
M9-Pも中古で買った。Summicron 35mmの8枚玉を使った時、こんなに写るレンズだったのか!?と衝撃受けた。
レンズがセンサーに負けたのか、レンズの性能が最大限に発揮されたのかわからなかったが衝撃だった。
しかし、私には違和感だった。これは違うかも・・・と。
それを原資に初代ライカモノクロームも中古で購入した。しかしこれもまた驚くべき写りだった。
まだ40万以上する。
一枚撮って驚愕だった。Summicron 50mm 2ndで撮ったその画像は私の知る、モノクロフィルムで撮ったSummicron 50mm 2ndの写りではなかった。
それ以上の素晴らしい文句のつけようのない写りだった。
(なぜかMMのデータが残っていないので写真は割愛で)
結果、やはりフィルムで撮ろうと思い直し、即手放した。(今後Mデジタルの維持費=修理代は出せないとも思ったから)
やはり維持費を出せるかどうかは大きいと思う。カメラは使っていれば壊れることもある。
例えば10年近く前になるが、M8のシャッターに不具合が出た時にライカショップに持ち込んだら、ユニットごと交換になるので最低6万(今はいくらか不明)と言われ、手放す決意をした。
愛着が持てなかったし、6万以上の修理費を払ってまで維持することは経済的にはできなかった。
フィルムライカなら・・・(比較対象が間違っているが)シャッター周りなら1万ちょっとからで直してもらえると思うと思うと無理だった。
トータルコストはデジタルに軍配があるが、目の前のコストの方が耐えられないという私の経済力のため、デジタルライカは維持できない。
今でもM8を使い続ける方をそこかしこに見かける。それだけ、「良い」と思わせるものがあるのだ。
たったの1030万画素だ。それでもいまだに中古品で値段がつくということはどういう意味なのか。
ライカの歴史、他メーカーを含む膨大なレンズも使えるユニバーサルマウント、1/8000まで切れるシャッターなど(1/4000で十分以上だと思っている)、エモーショナルな部分が大きいような気がする。
今、ニコンが限定でレンジファインダーS型デジタルを出したらどうなるか?50万でも買うか?
R-D1というカメラ
19万8千円!
EPSONとコシナがタッグを組んで世界初のレンジファインダーデジタルカメラを作った。APS-Cセンサーを搭載したR-D1だ。
これは大変人気があって、発売からずっと人気があった。アナログ指針やデジタルカメラには唯一の巻き上げレバーやそのセンサーから出てくる写真は皆が魅了された。
残念ながらフルサイズを出すことなく、レンジファインダーフルサイズデジタルカメラの座はライカに譲り、生産を終えた。
R-D1xGが最後の在庫品処分価格は9万程度だったと記憶している。
しかし、中古市場でのその後の高騰ぶりは好きな人ならご存知の通り。
やはり、R-D1も情緒に訴えるものがあったのだと思う。感動するカメラだったのだと思う。
AF一眼レフデジタルカメラとは違う、MFレンジファインダーデジタルという唯一無比の存在は今のライカMデジタルに通じると思う。
これしかない
FOVEONもいいぞ。
これしかない。他に選びようがない。
これはSIGMAのFOVEONセンサーカメラにも言える。GRも同じ言葉が使えると思う。
唯一無比。
この言葉は強い。
GRと他のカメラを比べる人はいるだろうか。かつてはフジとニコンからも似たようなカメラがあったがあえなく生産を終えた。
高級コンデジといえばGR一択といったところなのだろう。間違い無いという感覚。
画質一択ならFOVEONセンサーだ。これはセンサーの構造が全く違うので仕方ない。
ライカもこれしかないという感覚。AFカメラは他のメーカーに任せて(CL、SLなどもあるが)MFレンジファインダー=ライカという図式を作り上げた。
ライカなら許せる、GR、FOVEONなら許せるという点。他に変えるものがないという感覚。
今のニコンではDfがそれに当たるだろうか。
結構なお値段するが絶版になったら倍になるかもしれない。
R-D1と同じくマニアにしか売れていないようだが、このDfが生産が終わり中古のみになったら高騰すると思う。これも唯一無比なカメラだと思う。
欲しいと思わせるもの
高くても欲しいと思わせるものは何かと考えると技術だけでは足りないと思う。
やはり心動かされるものでないと欲しいとは思えないだろう。
かつての普及帯のコンパクトAFフィルムカメラが写ルンですに駆逐されたのはこれで十分と思えたからだ。
よって京セラやリコーやミノルタはContaxT2、T3やGR1s、V、GR21、TC-1を投入し、特にT2は売れに売れた。バブル崩壊寸前で助かった。T3はギリギリ売れなかったと思う。
今、ユニクロが国民服になったようにカメラも安いもの、安いものへ流れていった結果、スマホに負けてコンデジは消滅(と敢えて書く)した。
その中でGRが気を吐いているのはGRブランドがしっかりできていて、守ってきたからだと思う。
今はCONTAX T2の高騰もすごいが、数が少ないT3の方が高騰している。20万ぐらいする?
それでも欲しいと思わせるものがあるのだ。T2やT3には。
CONTAXブランド、ツァイスブランド。かっこいい。写りがいい。AFだから。コンパクトでカバンに入れて持ち歩ける。(私も何年もT3を入れていた)
何と言っても高級感だろう。こんなに高いものを買った=いいものを買った=満足感だ。
今後のカメラは高級化へ
デジタルカメラが主流なのは間違いないが、高級化は進むと思う。
センサー云々、連写枚数云々とかではなく、ブランディングを強化し値段を上げて利益を確保する方向になると思う。
私は賛成だ。
例えばV35でGT-Rが復活した時、安すぎると思った。777万円。ダメだと思った。スカイラインを外してGT-Rブランドで日産の旗艦車を売るなら安すぎると思った。
せめて3000万でもっとパーフェクトな車を売った方がいいと思った。レクサスのLFA程度の値段をつけて量産車にしないとダメだと思う。
そもそも嗜好品をみんなが買えるようにと考える方が間違い。
お金をかけていいものを作る。そして欲しいと思わせるものを作る。昔のカメラがそうだったように。
電気製品で一生物というのは難しいものかもしれないが、GRは長くファームアップで対応し、陳腐化を防いでいるし、フジのXシリーズも同様だと思う。
35mm f1.4をつけてみたい。
フジの独自センサーによる、訴求力も強いと思う。そしてもうひと回り値段を高くして利益を確保していきたいと思っていると思う。
数よりも質。
欲しいと思わせるものを作る。
これしかカメラ業界の生き残りはないと思う。
コンデジのGRが初値を11万をつけても売れる理由がこれにあると思う。