先日壊れたRolleiflex Standardを修理に出したところ、巻き上げギアの「磨耗」とのことだった。
ではギアの交換?というわけには行かない。
このカメラは1935年製の83年前のカメラだ。もうパーツはない。
直すにはパーツを作るしかない。というわけでグリスアップだけしてもらって帰ってきた。残念ながら直らなかった。
一生使えるカメラ?
「銀塩カメラは一生使えます」というセリフを見るが、ちょっと言い過ぎかなと。
今回の私の経験ではついに直せない、一生は使えないとなった。
83年経っているので当時「新品で買った人」には"一生"使えたかもしれない。
最近そろそろ直せないカメラも出てくるだろうなあと思っていたが、自分が経験することになるとは。
それにしても83年もよく動いていたなと思う。しかも「パーツさえあれば」直してまだまだ使える。
昨年もバルナックライカのDIIIが突然壊れた。この壊れ方は10年使ってきて初めてだった。
修理に出したところ「テンションバネの破断」とのことだった。
「バネが切れた」というところか。
表現としてバネの「損傷」という言い方でないところがなんとも経年劣化によるモノの状態を伝えているようだった。
このカメラも84年目。いつこういう風に壊れてもおかしくない。
幸い修理屋さんが部品を持っているとのことで交換してもらって事なきを得た。
部品を持っていないところだったら直せなかっただろう。(簡易な部品だったのかも?詳しくないのでわからない)
この部品もワンオフのものなのかストックしておいたものなのかわからないが直ってよかった。これがなかったら直せなかったところだ。
修理屋さんにも限界がある
先日、修理屋さんも疲弊していると書いた。
・九十九里浜をローライフレックスで撮ってきたが壊れた - カメラが欲しい、レンズが欲しい、あれもこれも欲しい
それ以前にRolleiカメラの修理で有名な「ロイカメラサービス」さんも修理受付を3月に終えていたようだ。
2014年ごろには部品のない2.8Fより以前のRolleiflexの修理は受け付けていなかったようだ。
・ロイ・カメラサービス 閉店 | 寫眞の音 Rolleiflex Photography
ローライの修理で有名なロイカメラサービスから3月末日で閉店というお知らせが来てがっかり。
— 赤城耕一 (@summar2) 2018年3月23日
その後、PENTAXのカメラ修理で有名な「鹿児島カメラサービス」の田中さんが亡くなられた。
実は私のPENTAX67も田中さんにOHしてもらったものだ。HPを読むとご病気のようでなんともやりきれない。残念だ。
カメラの高齢化
カメラの高齢化が進んでいる。
現在のカメラはデジタルカメラが中心なので機械式カメラ専門の修理屋さんもご高齢の方が増えている。
言い方が悪いがどちらが先かという状態にあるとも思う。
もちろん若い方で腕のある方もいらっしゃるので悲観はしていないが、今の「フィルムカメラブーム」でとても忙しいと聞く。
2~3年前は1ヶ月で対応してくれたところも今や3ヶ月は常識になってきた。
電気式カメラはいつまで直せる?
私は機械式カメラ原理主義ではないのでホイホイと欲しいカメラで買える値段ならば買ってしまう。PENTAX645も欲しい。
ちょっと前までは電気部品を使っているカメラなどは恐ろしいと思っていた。
例えば今人気のCONTAXシリーズ。これも最後のCONTAX T3がメーカー修理を終了した際(2015年4月)に9万ぐらいだったのが暴落し5~6万になった(と記憶している)。
T2も同様でメーカー修理が終わると「暴落」した。この時は2~3万になった。
これは電気式カメラの常だったが、幸いなことに信州で元京セラの方々が修理屋さんを立ち上げてくれた。
・コンタックス カメラ修理・レンズ修理 はリペアサービス諏訪にお任せください。
他の要因の方が強いかもしれないがおかげでまた高騰した。
T3などは高いなーと思って見ていたメーカー修理が行われていた頃より倍近く位になっているので恐ろしい限り。
流石にブラックチタンの箱付き18万とか見たときは目を疑った。
直せるものは直して使いたいがここまでの値段になると流石に怖いかな。
15万で買ったT3も直せないとなったら清く不燃ごみで捨てような!自治体の不燃ごみの日を確認しておくように。
ネット販売(オークション)について
ネット販売=オークションなどの素人販売が増えて、買った時からの故障品も増えてさらに修理受付も増える。
職人さんの数は限られているので時間がかかるようになるのは仕方ない。
また素人が分解して適当に組み直したものを再度修理屋さんが直すという悪循環も生まれている。さらに混み合う。
古いカメラは今回の私のように部品が壊れて部品のストックがなければ直せない。
さて、私は修理屋さんを探してオンオフでもいいからギアを作ってもらったほうがいいのか?そのコストは?
例えばライカM型の命でもある「ファインダー」もそろそろ直すのが大変な状態のものが出てくる可能性もある。
バルサム剥がれ(M2、M5の持病)、プリズム剥離などの修理代はもう一台買えるぐらいか。それでもお金をかければ直せる。払うかどうかだ。
あとはM6の露出計。そろそろ壊れ始めているのではないか?最初期1984年製のM6で30年以上経過している。これも直せるのか?直せるのならいくら払うのか?
ネットで全て納得して判断できるのか?それも良しだ。私もネット店舗で買うときもある。先払い、自己責任。(少なくとも返品保証があるものだが)
写真家の蜂谷さんは広島で東京に自分のバースイヤーライカであるM2ブラックペイントがあると知り、日帰りで買いに行ったと読んだな。
私も日帰りで東京から大阪にレンズとカメラを買いに行ったことがあるぞ。あの頃はエネルギーが余ってたな。
一生使えるカメラとは所有者がどれだけコストをかけたかどうかだと思う。
直すのを諦めるか、青天井にコストをかけてでも直すかの違いだ。結局のところカメラは道具なので簡単に一生使えるカメラとは言いたくない。
もちろんきちんと直せるのならいくら払ってもいいという考え方もあるだろう。
OHすれば新品同様?
いつから「ライカはOHすれば新品同様になる」と信じられているのだろう。
新品を使ったことがあるのか?今の時代ならよくてM型の新品を使った人ぐらいだと思う。
それでもM3が1954年発売なので今から64年前。昭和29年。このころに新品でライカを変えた人はどれぐらいいたのだろう。それで今も存命の方とは。30歳で買っても94歳。
今、MPなどライカの新品を買える人はぜひ長生きして生き字引になってほしい。
例えば35歳で買って50年後の85歳になっても使えているかどうかブログに書いて欲しいぞ。
そうか、その手があったか!買うか!M-Aなら露出計がないのでもっと直しやすいと思うぞ!
蛇足になるが10年ぐらいだったかカメラ屋さんで過去におじいさんが「A型ライカ」を持ってきて「直して欲しい」と言われて、カメラ屋さんがこれもいいけれどそろそろ普通のバルナックとかM型はどうなの?とお声かけしたら、「いやこれでいい。これしか使ったことないから」と言われて「どうもすみません」と平謝りしたとか。そういうケースも稀にある。
A型は1929年発売なので89年。昭和4年だ。ウォール街大暴落の日=ブラックサーズデイがあった年。このあと世界は戦争へと向かう。
そんな経歴を持ったカメラでも直せるものもあれば今回のように部品が摩耗してしまい直せなくなることもある。
これがカメラの寿命なのかなと今1935年(昭和10年)製のRolleiflex Standardを見つめている。
カメラで「戦前」というとまだまだ使えると思ってしまうが、よく考えるとこの年にナチスがニュルンベルク法を制定し、ユダヤ人迫害を始めた年とか考えると相当古いものなのだな。
このカメラの運命やいかに!?
直った!