先日、ひょんなことからCarl Zeissのレンズ、Biotar 7.5cm f1,5、エキザクタマウントの戦前モデルを手にいれた。
店頭で出されたときに一度は使ってみたいと思っていたレンズなので即決した。
何がすごいかというと、このレンズは1939年ごろにエキザクタマウントは200本ほどしか生産されていないレンズで、今回のはお店で調べてもらったら第二ロットの100本のうちの1本目だった。(シリアルの末尾も1)
また、旧コンタックスマウントもあったのだが、それを含めてもトータル1411本なのだ。
1939年に登場したBiotarの最初のモデルは重量感のある真鍮製クロームメッキ仕上げの鏡胴で、ボディカラーはシルバー、対応マウントはExaktaと旧CONTAXマウント、絞り機構はフルマニュアル(手動絞り)、最小絞り値はF16という構成であった。初期のロットにはガラス面に光の反射防止膜(コーティング)が無く、逆光撮影時にはフレアが豪快に発生していたようである。コーティングが施されるようになったのは戦時中からである。製造本数は僅か1411本と希少性の高い製品であった。
M42 MOUNT SPIRAL: Carl Zeiss Jena Biotar 75mm F1.5 (M42, 2nd model)
もちろんノンコートで真鍮製。
戦後になるとコーティングが入って、さらにアルミ鏡胴になる。
コーティングのせいか、ボケもきつくなる。
ビオターの58mmにしろ、75mmにしろ、ボケがぐるぐるのイメージは戦後のモデルから来ていると思う。
実は戦前のものはメイヤーのぐるぐるボケレンズと言われている、プリモプラン58mmもほとんど回らないボケになる。
今回の戦前ビオター7.5cm f1,5も同様で回ることは回るのだが、ひどいくせ球というほど回らない。いい塩梅と言える。
M42マウントの戦後モデルについてはこちら。
その写りを試してみたので今回アップする。
ちなみにエキザクタヴァレックスも手にいれたのだが、不具合が見つかったので返品となってしまった。
またしてもエキザクタにはフラれた・・・。
同じエキザクタマウントのRE Superも現在、シャッター不良で入院中。くそう。
エキザクタVaと。
ファインダー越しの私の世界ってやつを撮ってみた。
ウェストレベルファインダーの135フォーマットは慣れないなー。
作例的なもの
どうだろう。このレンズの最短でもある90cm~1mは75mm f1.5というスペックゆえ、絶大なボケになる。
ポートレイトにも最適だろうが、おそらく当時のツァイスは相当頑張ったというか、無理をして作ったんじゃないか。
もしかすると戦時中なので軍事用も考えていたのかも?
あと、よく見るぐるぐるボケとはまた違う感じかなと。あ、いや、十分回っている?
ダブルガウスだけにちょっとズマールの開放に似ているか?玉ボケの形とか。
ISO400のフィルムで木漏れ日で開放が撮れるところを探すのが大変だった・・・。
ISO100のカラーネガかモノクロフィルムが必要だな。
f2~2.8ぐらい。中心の解像度を見てみた。
周辺は滲み、ボケ始めているけれど、中心の解像度は高い。フレアはそんなに出ていない。
どれだけボケが回るか試してみた。
右側の木にピントを置いて構図を作った。
やはり中心からピントを外すと円状に回り始めている。
それでもきついかというとどうだろう。好みの問題かな。私は許容範囲内。汚い感じを受けない。あくまでも感じね。
これが今回撮った中でベスト。左側のシャドウの出方がすごく好き。
見た目通りに撮れた。
なかなかこういう写真は年に一回撮れるかどうかなのでプリントしよう。
露出を間違えたものかしれないが、これはこれで好き。自分の写真は基本的に好き。
こういう写真、普段なかなか撮らないけれど、実際に撮ってみるといいね。
ノンコートなのでもっとフレアとか出るかと思ったけれど、ほぼ気にならない。むしろいい感じ。
前ボケを。なんか不思議なボケ。
流れて行くようなボケかと思ったらそうでもなく。かといってふわとしたボケでもなく。
そして背景のボケは穏やか。これは特徴的かも。
ピントを置いたところに人に立ってもらって前ボケと後ボケをうまく使えば雰囲気あるポートレイトが撮れそう。
すごいね。すごい。それしかでてこない。
圧倒的なボケ。Bokeh。それでいてピントメンが立っている。
わかりやすいレンズ。
夜の光が少ないところでも撮ってみたい。
暗いところは暗く撮る。
開放f1,5と、
一段アンダーにしたf2で。ガラッと変わる。どっちが好きでしょうか!
今年上半期No.2ぐらいの傑作。
猫を見つけた瞬間、あ、これ撮ったらずるいなと、さえ思った。
この寝ている猫を見た瞬間、この写真は撮れていたといっても過言ではない。
なんせ一眼レフでボケも見えるし、背景のツツジは程よくボケるだろうしと全てがこの時は見えた。
手前ボケもそうだけれど、ピント面、背景のボケ、全てこのレンズと猫のおかげ。
私はピントと構図、露出を合わせて、シャッターを切っただけ。
手前のボケと奥のボケの違い。不思議だ。
これも予想通りと思ったら、全然。こんなに浮かび上がってくるとは思わなんだ。
すごいレンズかもしれない。
ピントがシビアだったけれど、撮った甲斐があった。
絞り開放で。この日のNo.3。かっこいい。
こんな普通の公園の道も、このレンズならこの通り。魔法のレンズだな。
ピント面と背景を見たくて。f2ぐらいだったと思う。
少し回っているけれど戦後モデルほどではない。これはモノクロの方がいい。
フォトショップでちょちょっと。ね?今度はモノクロで撮ろう。
どこにピントがあるんでしょうか。でもピント面は繊細に、ボケは柔らかく。
とても1930年代のレンズとは思えない。
まさかカラーネガというもので撮られるとも知らずにひっそりと約80年経過して来たかと思うとロマンあふれる。
この日、No.4ぐらい。素晴らしい。
なんですか、この絵画。こってり?あっさり?燃えるような感じ。
この被写体とこのレンズで撮った時点で勝ち。そんなレンズだな。似たスペックのライカのズミルックス75mm f1.4だとこうはならない。
もっとしっかりとした感じで写る。好みは完全にビオター。
ズミルックス75mmはちょっとモダンなところがあって、ライカだとヘクトール7.3cm f1.9に偏ってしまっている。
36コマ全部見せますじゃないけれど、最後のコマに奇跡が写ってた。
こんな雰囲気の写真が撮れるなんて。
一段アンダーにした結果、それがきついボケを抑え込んでドクダミの白い花を浮かび上がらせた。
ネガで一段アンダーって怖いけれど、やってみるもんだ。
ポジだったらもっとすごかったかもしれんなー。
どんなレンズか
とりあえず、駆け足でここまで来たけれど、すごいレンズだった。
この前玉。惚れ惚れするわー。フィルターがぶつかりそうだー。
純正フードがあるらしい。シルバーで被せらしい。らしい。
ほんと戦前ツァイスのアクセサリー関係はこれが純正!?と思えるような"いで立ち"なので見つけるのが困難だ。
JENA=イエナ地方のカールツァイス、「コシナ長野」みたいな刻印。かっけー。
ツァイスのレンズの開放値に使う、数字は1.5じゃなくて1,5。
コンマじゃなくてカンマ。なんかのこだわりなんだろうか。数学的な?
ちなみに現代のツァイス、ヤシコンもコシナもカンマの伝統を守ってる。ライカはコンマ。
後ろ玉。ギリギリいっぱいまでガラスが詰まってる。この後玉で開放値を稼いでる。
径55mmの井戸。井戸を覗く時井戸もまたこちらを覗いているのだ。どぼん。
存在感。
実はα7IIに先日の中古市で買ったZuiko 50mm f1.4で撮った。
このレンズも面白い。開放がにじむ。これはブツ撮りのため、f2.8まで絞った。
ここまで絞るとカリッとしてくる。
はい、開放。手前のにじみっぷり。いいね。
α7IIもキャッシュバックがあるし、下取りに出したα7Sからもお釣りが出たし、はい、レンズでも買うか!
持ち歩くときは後ろ玉がこぼれないように慎重に・・・慎重に・・・。
このピントリングなどのローレットの刻みもいい塩梅になっていて、工作精度の高さがうかがえる。
1939年製なのでポーランド侵攻とかして、ドイツが一番イケイケドンドンの頃の国力がみなぎってる。
しかし、その後の1940年代のカメラのメッキなどはどんどん品質が落ちている感じを受ける。
職人が徴兵されて、亡くなっていったからとも聞いている。
色々ある時代に生まれたレンズ。
万が一、火事になったらこれを持って逃げるつもり。
今度はポジでも撮ってみたい。
モノクロならISO80でこのフィルムを試してみたい。