私が使っているカメラとレンズで一番長く使っているのは、父の形見であるPENTAX ME Superを除けば、1934年製のバルナックライカ DIIIと1933年製のエルマー 5cm f3.5だ。
購入した時期
購入したのは調べたら2007年11月3日だった。買ったその日にカラーネガを詰めて撮っていた。
記念すべき一枚目。何を撮りたかったんだろう。いきなりフィルム装填ミス。フィルムは今はなきDNP400。一本150円ぐらいでよく使ったなー。コンビニ同時プリントが798円ぐらいだった。もう今はコンビニではフィルム現像受け付けてないね。
それまでバルナックライカはIIIf、IIIbと使ってきたがいわゆる黒塗りバルナックライカは使ったことがなかった。
ふらっとお店に立ち寄ると、あ、このDIIIきれいと一目惚れ。
触らせてもらうと巻き上げもすごい滑らかでシャッターも問題なし。
(と、言うよりその頃は全く良い悪いがわからなかったのでお店を信用していた。)
それに外観も二度と買えないと思えるほど綺麗だった。
しかし、当時は今ほど安くはなく、かなり高かったので、その日は触らせてもらっただけで帰った。
一晩、悩んだ結果、次の日には電話して、取り置きしてもらった。
一緒にレンズも購入した。
ブラックペイントボディに合わせて、ニッケルエルマー5cm f3.5。
お店の人に数本あるもの中から程度の良いものを選んでもらって決めた。
フードはサービスしてもらった。
右上がフード、真ん中が絞りを回すためのリング、左がフィルター。
こんなリングも純正で用意している、ライカは色々おかしい。
しかも、高いのに買ってしまう無念さ。
今思えばすごいサービスだったなと思うのがこのフード。
フードはこれもかなり古いものでブラックペイントのエルマー用のもの。
FISONの初期型で今買うとこれはかなり高額。
今、買えと言われたら、二の足を踏む。
ライカのフードは本当に高いのでげんなりする時もあるけれど、必要なものと言い聞かせて、目をつぶってえいやとカードを切っている。
サードパーティのものは値段も1/30ぐらいなので、これで十分と思って買っても、結局、純正が欲しくなるのでサードパーティのものは純正が無い時以外買わないようにしている。
その分、高くつくから。
ストラップはアルティザンアーティストのコードバンストラップ。
当て布(革)が無いストラップはボディを凹ませる可能性があると修理屋さんに言われていたので、ライカ純正はリングがむき出しだったので買わなかった。まぁ、当て布をつければ良いんだけれど。
支払いをする時に店主に「これはうちのお客さんでコレクターの人から買い取ったもの」と言われた。
あまりに綺麗なので「本当に使うの?」とも尋ねられた。
私はコレクターだけれど、使うコレクターなので、「ええ、喜んで使わせてもらいますよ」と言ったがその時は自信がなかった。
見せる人みんなにきれいですね〜と言われて鼻が高かった。
それらのセットを今も使っている。
買って、使い始めて7年の昨年、写真にシャッタームラが出始めたので、OHに出した。
OHから帰ってきたDIIIは快調そのもので、シャッター音もテンションを下げているんじゃ無いかと疑うほど静かになった。
気づけば、ボディにも少し凹みも出来ていた。
あれ?こんなところに凹みあったっけ?とか。
もっとペイントが剥げるかなと思ったが思っていたより剥げていない。
当時のペイントは手塗りだったらしく、厚みがあって簡単には剥げないらしい。
バルナックライカはおおまかに戦前と戦後で大きさが違う。
初めての市販ライカである、A型から戦中のIIIbまでと戦中のIIIcからIIIf、IIIgまでの大きさが違う。
その差、高さが2mm、横幅が2.8mm。
そんなのわかるの?と思うかもしれないがはっきりとわかる。
人間の手はとても敏感なものだなと思う。
私の手は小さい方なのでIIIbまでの方が手になじむ。
それからIIIbまで(正確にはIIIaまで)が板金。
その後はダイカスト。
IIIbは下半分が板金でファインダー部分がダイカスト。
板金はもちろん職人が一台一台叩き出す。
もうこれを知っただけでロマンを感じてしまいやられてしまう。
戦争に突入すると、職人が足りなくなり板金からダイキャストに移る。
もちろん精度はダイカストのほうが高いのだろうけれど、ロマンがないね。
カメラはロマン。
趣味はロマン。
人生もロマン。
バルナックライカはフィルム装填が難しい。
いや、慣れるまでは難しい。
フィルムの先端を約10cmほど切らないといけない。
ギヤにきちんと噛んだかどうか確認しないといけない。
フィルム装填に失敗してフィルムをカメラ内部で千切ってしまうとOH。
DIIIはシャッタースピードが1/500までしかないけれど、これで不満を感じたことがあるのは一度だけ。
ド・ピーカンの海ほたるで写真を撮ろうとしたら、ISO400のフィルムを入れていたので、露出がf16の1/1000って。
しかもその時に使っていたレンズはズマールで最小絞りがf12.5。
最速シャッタースピードが1/500なので2段ほどオーバー。
構わず撮ったら、真っ黒なネガになってしまった。つまり白っぽい写真。
白っぽい。現像ムラも出ている。
減感とか増感はあまり好きではないというか、うまく現像できないのでしない。
もうね、これからはそういう時はあきらめて「撮らない」のね。
それでいいじゃない。
クラシックカメラなんてそんなもの。
使う場所を選べば良いだけ。こちらが歩み寄ればいい。カメラのせいにしない。
DIIIはそれまでのDIIなどと違って、スローシャッターがあるから夜も撮れる。
夜スナップの味方、スローシャッター。
夜のスナップは最高に楽しいのだ。昼間とは全く違う光景が見られる。
三脚使っても良いし、電柱にしがみついても良い。
おでこにしっかり当てて、ぎゅって脇締めて1/8を切る。
大伸ばししなければブレなんてわからないよ。
今のデジタルカメラはすごい大きなサイズで写るのでブレ、ピントはごまかせない。
フィルムは中判でない限り、ごまかせる。
フィルムカメラって、そういう、曖昧な所が好きなんだな。
面倒くさがりなのである程度テキトーが一番いい。
レンジファインダーカメラが好きなのも一眼レフのようにピントを追い込まなくても良いから(良いと思っているから)で、短気なのですっと合わせられる方が良い。
カルシウムが足りてないのだ。
M型ライカを使ってからバルナックライカに戻るとほっとする。
しかも50mmだとなおさら。
それにエルマー5cmだと、いっそう基本に戻った感じがしていい。
バルナックとエルマー5cmでいっぱい学んだ。
露出、ピント、写真のこと、カメラのこと。
今、バルナックライカはとても安くなった。
私がDIIIを買った頃の半分以下。
3万以下でも見つけられる。
フィルムの値段が高い、現像代が高い、プリントが高いと3重苦。
それでも楽しい。
フィルムが買えなくなるほど値段が上がったら、置物にしても良いぐらいかっこいい。
いや、清く売り払って、だれかまだフィルム写真を続けてくれる方に使ってもらう方がいいか。
そうやって、私のバルナックライカDIIIも1934年に作られて様々な人の手に渡って、73年という時を経て2007年に私のところに来た。
それから8年経つが、まだまだ現役でいてもらうつもりだ。
今週のお題「愛用しているもの」
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