この骨は2023年1月に益子市の八幡神社(山本)の森で拾ってきた。
最初はどうしたらいいのかわからず、とりあえず、一番太い大腿骨みたいなのを試しに水洗してみた。これだけでも、結構綺麗になったが、もっと真っ白でもいいかなと思い、色々調べてみたら、エタノールとか入れ歯用洗浄剤とか出てきた。
コロナ禍の時は無くなって大変だったな。
マウスピース用に持っていた。
まずはエタノールに漬けてみた。(のちに間違いだったことに気づいた=オキシドールだった!)大きな変化はない。次に入れ歯用洗浄剤。これは酵素がタンパク質を分解するのでおすすめとのことだった。
ただ、もう本当に骨になっていたけれど、汚れと虫、細菌とかが怖かったので、入れ歯洗浄剤の後に、塩素系漂白剤に漬けた。
それで少し水で洗浄して、乾燥させたら真っ白になった。
よし、これで行こうと思い、塩素系漂白剤に全て入れて一晩置いた。
水で洗浄して、乾燥させたら・・・真っ白にならない。あれ?
じゃあ、エタノールか入れ歯洗浄剤か。と思い、再度漬けようとしたら、ビーカーにポロポロと歯が落ちてきた。おお、これは危ないということでここまでにした。
結局、でかい牙のようなものは4本全て綺麗に抜けてしまったので木工用ボンドで接着した。
これがパズルのようで面白かった。絶対に間違えることのないパズル。
目次
齧歯目
この牙は「門歯(切歯)」というらしい。つまり齧歯目。
何よりも頭蓋骨と顎に臼歯が残っており、そして「門歯(切歯)」が上顎、下顎には2本ずつ、合計4本がある。
前歯が4本鋭く、鉤のようで、奥歯は臼状。臼歯は2個ぐらいしか残っていなかった。
最初拾った時は牙に気づかなくて、モグラが自然死したのかと思った。
頭蓋骨見てたら、あ、目があるのかと。するとモグラではないか。
牙から考えら得るのは"齧歯目"。
この牙の「門歯」が決め手か。犬歯を持たないのもアタリ。そして臼歯がある。
あごにはめてみた。
歯隙(しげき)
門歯、臼歯の間に「歯隙(しげき)」があるのも特徴。
齧歯目ではネズミ、リス・・・他には?
するとネズミ、リス、モモンガ、ムササビ。
上の門歯(切歯)と下顎の門歯(切歯)は下の方が鋭いか。
後眼窩突起
あと、「後眼窩突起」と呼ばれる、目の上に突起がある。
齧歯目でこれがあるのはリス科なのでリスかモモンガ、ムササビ。
モモンガやリスの後眼窩突起の先端は細くなり側頭窩よりになるが、ムササビのものは△状に突き出る
故有事: モモンガ、リス、ムササビの頭骨 The skulls of squirrel and two kinds of flying squirrels
ムササビなのか?
肩甲骨
肩甲骨だと思うんだけれど。
表と裏なんだけれど、左肩の部分かと。
肋骨?
曲がり方から肋骨か?
大腿骨ではなく上腕骨?
大腿骨かと思っていたがよく見ると骨を見て左側の根本部分(=肘?)に穴がある。"顆上孔"と呼ばれるものであれば木登りをする動物の"腕"とのこと。
故有事: これはムササビの骨か? Are these bones flying squirrel?
すると、一番上の骨は前腕(橈骨と尺骨)?この辺がわからない。
下、2本は大腿骨かと思ったら上腕骨かもしれない。
関節の部分。肩につながる部分か?
長さは7.5cmほど。結構大きく感じる。
背骨
脊椎動物。この背骨の中の脊髄はすでに空になっていて、ゴミで埋まっていた。洗うとスポッと抜けた。
推定
まとめると、
"門歯"があるので「齧歯目」。
"歯隙(しげき)"があるのでネズミ、リス、ムササビ、モモンガ。
"後眼窩突起"があるので「リス科」でリス、モモンガ、ムササビのどれか。
モモンガとムササビを比べると骨を比較すると大きい。
モモンガとムササビではムササビの方が大きい。
ムササビの可能性が高い。
リスとムササビを比べると、やはり骨の大きさからリスだとしたらかなり大きくなる。ムササビか?
リスかモモンガ、ムササビの決定打となる前足手首近く(手根骨)の“針状軟骨”部分がない。
しかしネットで骨格を見れば見るほど、ムササビに近い気がするのだが・・・。
参考までに以下。
頭部がそっくりなのだ。
ムササビの骨格標本が完成しました!ここで、その滑空能力のヒミツ、教えちゃいます・・・
— 市立大町山岳博物館 (@sanpaku1951) August 25, 2021
彼らの手足の間には皮膜があり、それを使い滑空することは有名ですよね。実はもう一工夫あり、手首に“針状軟骨”なるものを持つことで、更に表面積を広めているのでした!#ムササビ #骨格標本 #博物館豆知識 pic.twitter.com/XYlYXHPAig
どうも、今回の骨はムササビではないかと思うが、詳しい方がいたら教えて欲しい。
作業を終えて
今回、骨をつぶさに観察して、昔なら百科事典を広げるところをネットを広げて同定を進めた。
とても知的好奇心を満たすことができ、大変満足できた。ここから先は専門家の方の意見を聞かないと同定できない。
栃木の森の中で夜、このムササビ(と仮定した)が森の中を滑空していたのかと想像し、どうして死に至ったのかを考えさせてもらった。
そして何よりも学びが大きかった。要らぬ知識はないと考えている私にとっては大変有意義な体験だった。
間違った知識を得たら、正しい知識を得た時に上書きする。ずっと探究心を持っていたい。
来年、再び益子へ行くであろうから、その時に骨があったところへこの骨を戻そうと思う。感謝の思いと共に。