江戸時代末期から明治時代初期の写真湿板を手に入れたのでスキャンしてみた

2019年 2月10日 追記 撮影時期について

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今年も年始は益子に行ってきた。そこで古道具屋さんに寄った時に、これを手に入れた。

以前、写真乾板を手に入れたお店だ。

aremo-koremo.hatenablog.com

店主曰く、タンスを買い取ったら中に入っていた一枚で売るつもりはなかったと。

お店で棚を買った後、私が以前こちらで写真乾板を買わせていただいので、古い写真の在庫があるか尋ねると倉庫から持ってきてくれて、「良かったら差し上げますよ」と言っていただき、よろこんでいただいて帰った。

地方などで買取りをする時に「写真乾板」か「写真湿板」かわからないが、箱ごと出てくることが多かったと。

その頃は「写真は要らない」、「箱が可愛い」という需要があると言うことで写真やフィルムは捨てていたが、最近、写真好きな方から「写真やフィルムの方が欲しい」と言われて、少し気にするようにしていたとのこと。

最近、フィルムをスキャンしたら捨てるという方を結構、見かけて驚くが、それも時代なのかなとか。

私は絶対にフィルムは捨てないぞ。200年後ぐらいに価値がぐうーん、と上がるからな!ファイルにカビ防止剤をいっぱい入れておこう。

だから今のうちの私のフィルム買っておいたほうがいいぞ!オークション形式にするぞ、さー、ビットしろ!

目次

写真乾板かと思ったら写真湿板だった

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最初に店主が持ってきてくれた時はライトにかざして見たが「劣化がひどくてよく見えないんですよね」と言われ、確かに見えないと思ったが、よく見たら「ネガ」じゃなくて「ポジ」だった。

すると、これは写真乾板ではない?写真湿板ですよね?と話し込んだ。(こういう時間が楽しいのだ!!)

逆に上から光を当てて背景を黒にしてみたら、三人の女性が写っているのがわかった。

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ちょっと見えづらくなってしまったか。

このように表から眺める感じ。手前に幼い女の子、その奥左に少しお姉さん、一番奥にお姉さんと行ったところか。三姉妹?手前の幼い子は"動体ブレ"している。

写真湿板については斧田(@pigya )さんが以前、ワークショップに参加された時の記事を見て、知っていた程度。

wonodas.hatenadiary.com

ロマンあふれる写真湿板。

写真湿板で現在も撮影しているお店がある。

谷中にある、 湿板写真館 of ライトアンドプレイス湿板写真館だ。2万円で撮影してもらえるのなら、遺影を撮ってもらいたい。

あと六本木の田村写真ではワークショップも開かれている。

劣化具合

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裏側から見た感じ。全く何が写っているのかわからない。

こちら側に薬品を塗布してニス塗りもするようなのだが、ご覧の通り劣化(薬品の剥離)している。

茶色い部分はニスか?ニスが剥がれ落ちて、そのまま薬品も劣化してこの姿になった?

画面右下は明らかな劣化と思われるが・・・。

また、画面左側が薬品が塗られていないような感じになっているのは、この写真湿板を撮る時に薬品自体が塗られなかった可能性がある?

とは、言え、これは貴重な写真かと思うので色々と調べてみた。

写真湿板とは

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撮影前に一枚一枚、ガラスなどに溶液(コロジオン溶液)を塗布し、この溶液が乾く前に撮影する。ISO感度が1などなので約20秒ほどじっとしていないといけない。

なので、手前の幼い女の子は動体ブレを起こして顔がブレているのではと思う。次女らしき人が三女の手を握っているのは動かないようにしているためかもしれない。

坂本龍馬の写真は写真湿板でシャッタースピード(露光時間)は20秒と言われている。

よって、被写体は座っていることが多く、さらにブレを防ぐために首を支える道具などがある。

写真湿板の中でもガラスに撮影する"コロジオン・ポジティブ"、"アンブロタイプ"とブリキなど鉄板に撮影する"ティンタイプ"というものもある。どちらも一点ものとなる。

ほか紙に撮影するものもある。

湿板法の時代の到来 | 産業の歩み | Shuffle by COMMERCIAL PHOTO

また密着プリントで複写をする方法もある。

撮影したガラス板を額に入れて黒い背景で像を浮かび上がらせる方法で鑑賞する。

カメラは大判カメラなどを写真湿板専用に改造したり、ハッセルブラッドを改造されている方もいる。

Wet plate by hasselblad (ハッセルブラッドによる湿板) | 4tographique

こちらの方は写真に対して情熱的な方でよく読んでる。

撮影方法の動画

www.youtube.com

動画で一気に見てしまう方がイメージしやすい。

写真湿板の歴史とこの写真はいつのものか

1851年にイギリスのフレデリック・スコット・アーチャーが発明する。

日本には江戸時代末期、安政年間(1854~60年)に輸入される。 

1871年(明治4年)に写真乾板が登場し駆逐される。

つまり、この写真は江戸時代末期の1854年から明治初期の1870年代までのものとなるのか。

例えばこの写真が明治元年のものだとすると1868年なので2019年現在で、実に151年前の写真となる。

それが放置されていて、この程度の劣化で見られるのはすごいことではないのか?

2019年 2月10日 追記 撮影時期について

フォロワーさんより情報があり、この写真、江崎礼二の「隅田川水雷写真」 が国内で乾板が知れ渡ったきっかけとされているので、そこを基準とするなら1883年(明治16年)以降ではというもの。

この情報からすると、さらに10年ほど近年のものとなり、1887年(明治20年)ごろまで視野に入れてもいいかもしれない。

参照:http://www.jcii-camera.or.jp/business/pdf/photographer_biographies24.pdf

デジタルとアナログの保存性の差

デジタル画像とこのようなアナログ写真どちらが保存性に優れるのだろうか。

デジタル画像は手間がかかるがSDカードからPC(スマホ、タブレット)のHDへ。HDから外付けHD、ROMなどへ、もしくはクラウドへ保存する。

デジタルの場合、ハード、ソフトなど機材が日進月歩で進化して、毎回毎回対応しないといけない。それを忘れると「読み取れない」と言うことが起きる。

ちなみに最近、"15年前のCD-ROM"を読み込ませたら、読み込んだが、今後が不安になったのでHDに逃した。

湿度や温度の管理などもあるが、アナログ写真はフィルムネガなら100年程度は現在に至るまで保っている。

デジタルもアナログも一長一短と言ったところか。

どちらも印画紙にプリントをすれば、データ、ネガ以上の保存性は保たれるのかもしれない。

先の大震災の時に印画紙プリントは水で再洗浄したら蘇ったが、インクジェットプリントは水性なので全て落ちてしまった。またデータはPCごと流された。

今後デジタル画像、情報の保存については頭を痛めることになると思う。

スキャンしてみた

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スキャナーはEPSONのGT-X830。反射投稿モードでdpiは1200。取り込んでフォトショップでチョチョイ。

全然良さが伝わらないのが辛い。ガラス上にあるポジティブ画像だ。

実際に見てみるとかなり奥行きがあり、立体感があるのだが、こうやってデジタル化すると完全に2D化されてしまう。

まず、手に持って気になったのは「ガラスの切り方」だった。上の画面右下の割れ方からすると、このサイズに手で切ったと言う感じ。

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左側上部。切り口が結構波打っている。機械で切った感じがない。

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右上上部。こちらも波打っている感じ。

おそらく当時の写真館の撮影者が自分でガラスを切って、薬品を塗布したか、こう言う売り方だったのか。

分業という時代ではなかっただろうから、前者の写真館で撮影者がガラスを切って、カメラのサイズに合わせ、薬品を塗布したのではないかと思う。

この写真湿板のサイズ

実寸で、横:5.7cm x 縦:7.8cmであった。

サイズとしては小名刺判の"5.7×8.3cm"に一番近いか。名刺版の5x7cmにも近い。

この辺りは手作りということで少し余裕を持たせたのかもしれないし、カメラのホルダーが実際にこのサイズだったのかもしれない。

この写真湿板を飾っていたのだろうか

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これを自宅に飾っていたのかもしれない。

しかし、写真"乾板"と違い、当時は写真自体、かなり高価で珍しいものだったはずなので、撮影をしてもらったこの家は、当時"相当なお金持ち"だったのではないかと。

すると、ごく少数の人ということになるので、もしかしたらご本人は無理でもそのご家族が見つかるかもしれない。

スマホ全盛の現代の写真が、仮に100年後も見られたとしても、絶対に特定は難しいだろうな・・・。自撮りとか・・・。

こうやって150年前の写真をじっと眺めていると「本当に存在したのだな」としみじみ感じる。

それが写真の好きなところで、家族写真は絶対に撮っておくべきと常々思う。

今のままの、あるがままでもいいので撮って、プリントしておけば20年後、50年後、100年後発見されたら、死んでてよかったと思うぐらいに恥ずかしいだろうけれど、家族は泣くだろうと思う。

私なんて自分が生まれた年の私が写った写真が実家のご近所さんが持っていたと渡された時、泣いた。

aremo-koremo.hatenablog.com

自分が写っているだけで泣くのに、4~50年後、どこからか亡き祖父母、父母などが写っている写真を発見したら確実に泣くだろう。

写真が好きな人は古道具屋やアンティークショップなどに行ったら、少し探してみるといいかもしれない。実際の写真を見ると感動するぞ。

さらに1955年〜1965年(昭和30~40年)代のスライドフィルムも手に入れたので次回はそちらをと思うのだが、調査結果がまだ出ていないので、ちょっと先になるかも。

古道具屋巡りはやめられないなー。一つの趣味になりつつある。

安いからポンポン投げ込んでる。

必要十分なスキャナー。 

aremo-koremo.hatenablog.com

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